JAL機炎上 脱出経緯や乗務員の役割について説明

 日本航空(JAL)は1月3日夜、1月2日に発生した札幌/千歳発東京/羽田行きのJAL516便と海上保安庁機の衝突、炎上事故の記者説明会を開いた。脱出の経緯、着陸時点の航空機の状態、運航乗務員の役割について、堤正行常務執行役員、青木紀将常務執行役員が説明した。内容全文は以下の通り。
脱出の経緯

 1月2日、JAL516便が羽田のCランウェイ、34Rといわれる滑走路に進入・着陸した際に、海上保安庁の機体と接触をしたという事例を発生させております。この時の着陸の際のやり取りということで確認をしてまいりました。
 まず運航乗務員からの情報といたしまして、滑走路に接地後、突然の衝撃があったということです。そして衝撃後、結果的には滑走路右側に滑走を始めて停止をする事態に至った。そして完全停止した後、機体が止まった後、最初は火災の発生に関してコックピット内での認識はありませんでした。客室乗務員からの報告により、火災の発生を認識し、脱出が必要と判断をしております。
 その際、脱出に際しては、運航乗務員はチェックリストというものを用いまして、エンジンを切る必要がありますので、これを確認を行っております。そのチェックリストが終了後、緊急脱出時に機外に持ち出す必要のある搬出物、これが規定されておりますので、これを手に取りまして、後方キャビンへ機長は移動しております。これも(運航)乗務員の役割として定められないというものです。
 客室では、機長が外に出た時にはすでに脱出が始まっておりまして、機長の見える範囲ではお客様は前方L1、R1と言われるドアの方に移動の準備をしていたという認識です。機長は後方に行くという意識を持っていましたが、前方にいらっしゃるお客様に少し交錯する形になりまして、その降りるタイミングも見計らって後方へ移動していたというふうに申しております。
 逃げ遅れたお客様がいないかどうかを確認するのが、運航乗務員、機長の処理でございますので、それを一つ一つ、1列1列座席を確認していたところ、やはり何名かのお客様が残っていらしたのを確認してですね、前方のドアの方へ移動を促したという風に聞いております。そして、最終的に機内にお客様がいないことを確認をいたしましてですね。客室(乗務員)と一緒に後方の左側のドアL4という、こちらから脱出をしたということでございます。
 そして、客室(乗務員)の方の動きでございますが、まず完全に停止をした時に、我々の訓練等で定められております、まずお客様のパニックのコントロール、同乗されているお客様を鎮めるためにですね、大声で落ち着いてくださいということを言うようにされておりますので、これを実施しております。
 その後ですね、L2といわれている左から2番目のドアのキャビンクルー(客室乗務員)からですね、左側のエンジンから火が見えるという報告を受けまして、チーフ(専任客室乗務員)が後ろへ移動して、チーフ自身も火がでていることを確認をしました。
 そしてその事をコックピットに知らせるために、コックピットへ向かましたが、何らかの理由でですね、コックピットドアが開いておりましたので、直接PIC(機長)にこの状況をご報告をいたしまして、キャビンの状態から脱出が必要であるということで、私の指示をくださいということをしております。
 この時点で申し上げた通り、コックピットドアは何らかの理由でドアの施錠があいている状況であります。そして、PICから脱出するようにという指示をもらい、脱出指示を得た。
 そして後方のキャビンでございますが、これも何らかの理由でですね、機内にインターホンシステムが故障しておりましたので、前方からの指示を待っておりましたが、ないということでございました。着陸の際にですね、煙が機内に入り始めまして、かなり濃い煙が充満してきたということでございます。外を窓越しにみますと、オレンジ色のものが見えましたので、火だというふうに思ったとのことでございます。
 そして、Lサイドの一番後方の扉のキャビンクルーが左と右とおりますけれども、右側から見たR4というデューティーのものは外に完全に火が見えたため開けられないという判断をしまして、その他のドアへ誘導しています。左側のドアのL4と言われるキャビンアテンダントが外を確認したところ、火災がなかったということで、また脱出シュートに展開するこのスペースの余裕もあったという判断をいたしまして、L4のドアを開放いたしました。ドアを開放する前にですね、その指示をコックピットから得なければいけませんので、それを試みましたが、やはりこう何らかの理由でインターホンシステムも、それからPAと言われているアナウンスシステムを使えなかったために、最終的に脱出指示を自分で判断してお客様をご案内したということでございます。そして、この最終的にお客様を外へ脱出させたと機長が確認したということになっております。
着陸時の航空機の状態

JAL(エアバスA350-900型機、JA13XJ)

(エアバス)A350の516便に関しましては、機材の不具合等はなく通常運航がされておりました。
 通常着陸に際して、ギア、もちろん必要ございますので、着陸前に操作をして着陸できる状態、ギアダウンの状態を作り出しますが、その際にもちろん乗員が確認するんですが、これにはいわゆるギアの状態を表すですね、インディケーションライトというのはございまして、これが3本ギアがありますので、3つともグリーンのライトが点灯するということで、システム上のダウンアンドロックを確認するという手順になっております。
 そして、もう1つはチェックリストがございますので、着陸前のチェックリストでそのライトの状態をもう一度確認するということ。それからこの機種によって違うんですが、A350の場合はですね。1,000フィート以下になった時にギアが下りていないとですね、アラート、警告が出るというシステム上の警告装置も備えておりましたので、これらを合わせますと何も異常がなかったということでございますので、ギアはダウン&ロック、下りていたというふうに判断できると認識しております。
運航乗務員の役割
 この516便では、3名の運航乗務員が乗務しておりました。通常(エアバスA)350の場合は2名で運航が可能でございますが、このフライトに関しましては右席に座っております副操縦士が(ボーイング)767型機からA350の移行訓練のフライトでございました。
 当該の副操縦士はですね、すでに(エアバス)A350の国家資格を有している、(エアバス)A350の副操縦士候補者ということになりますが、国家資格を得ただけではなく、弊社におきましては、定期便による業務実習の実施要件を必要としております。一般の運航便で一定度のOJTを行った後、社内審査に合格して初めて副操縦士、A350の副操縦士として認定されるということになっておりますので、その資格を得るための訓練をしていたというフライトになります。
 そして、左席の機長でございますが、この機長は(エアバス)A350の訓練部に所属します、操縦教官でございます。そして、右席にこのような訓練中の乗務員を乗せてを操縦をさせるという資格も有しておりました。
 そして3人目のパイロットは、オブザーブシートに座っておりまして、これはすでに(エアバス)A350の副操縦士としての資格を有している操縦士でございまして、社内規定ではこのまだ発令されていない副操縦士を右席に座らせるためには、後ろでしっかりと資格を持ったものが、この右席の副操縦士が業務をしっかりと行っているということを確認をする、セーフティパイロットと呼んでおりますが、この3名での編成が必要になるということで、今回3名で操縦をしておりました。
 ということですね、しっかりと後ろからモニターするという仕組み、そのような状況、右席(副操縦士)の操縦で着陸まで行わせたということになります。

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